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しんしんと夜が更ける。足を絡ませたベッドシーツはひんやりとして、私の不安を助長させた。
今夜も私の背中を、きっと指がなぞる。
学校の屋上で、悪戯げに優子に背中をなぞられてから、その感覚が抜けずにとうとう今に至る。あの時高校生だった私は大学を卒業し、社会人となり、明日結婚する。式を目前に、気にしていた背中にとうとう痛みを感じたのだった。
いつもなぞられているその感覚。あまりにも日常に溶け込んだその感覚は私を麻痺させた。背中をなぞられないと不安になる。でも今日は違う。爪を立てられているような。なぞるというより刻みつけるような。私は痛みを我慢できず、電気をつけて鏡で背中を確認した。
みみずばれができていた。赤く浮き上がる「愛してる」
何度もなぞられるその文字は、私の背中に血を滲ませた。
私に恋した優子を誰にも渡したくなくて。
あの日優子を屋上から突き落としたのは私だった。
愛していたのは私だ。
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公開:20/05/28 07:28
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夜野 るこ

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