ツボにはまる

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「いいもんを骨董屋から買ったぞ」
そういって夫が出したのは、なんのへんてつもない壺だった。
その金額を聞いて、もう少しで夫の頭にその壺を振り下ろすところだった。いや、そうすべきだった。

「まあ待て。実はこいつは魔法の壺なんだ」

壺の底に謎の紙が入っていて、そこから金貨が限りなくでてくると自慢げに。
「ふ。これで負け続きのオレの人生はかわるぞ」と壺に手をいれる。なるほど壺の中で金貨の音がしはじめるではないか。つい感心したが、夫の顔色がかわった。
「手が、ぬけないっ」

む。こんな話、聞いたことあるある。
たしかあきらめて金貨を手放し、手をグーにして壺からだすんじゃなかったか。
だがそうしても夫の手はぬけない。

「中のやつが紙だから、負けなんだ」

ジャンケンかい!

じゃあチョキにせいというと、夫の手をいれたまま壺ががくんと床に落ちた。

「……石になった」
その他
公開:20/05/28 01:06

kei

再開しました。今までコメントをしてくださった方々、お返事できず失礼しました。
これからもよろしくお願いします。

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