見てろマサル!

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「色褪せたな」
部屋に1枚の色紙がある。
中学の時、茂吉先生が最後にくれたもの。
生徒各々に合うメッセージがそこにあり、僕には『一途な夢への挑戦』と書かれていた。


色褪せたのは、それだけではない。


「久しぶり。マサル」
マサルとは僕のこと。僕は茂吉先生に会いに行ったのだ。元々老けていたから、昔とそんなに変わらない。
「マサル、昔とそんなに変わらないな。元々老けてたからな(笑)」
「先生に言われたくありません」
普通に話すだけで昔の気持ちが蘇るが、
「先生にもらった色紙。夢、叶えられてないけど」
と、現状を報告した。
「マサル。書いてある通りだ」
「え?」
「ちょっとその色紙貸せ」


部屋に戻った僕は、色紙を飾り直した。
もらった頃みたいだ。


「ちょっとその色紙貸せ」
「はい」
「見てろ。マサルの夢は色褪せない!」
茂吉先生はマジックで濃く太く色褪せた文字をなぞってくれた。
その他
公開:20/05/27 23:34

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