柔らかな寝息

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ここを出ていくと決めたのは、あなたを愛していないからじゃない。
距離が近づくほど、私達は自分の意見ばかりを押しつけて、気づけばお互いに傷つけあって、疲弊しきってしまってた。
お皿の洗い方とか、コーヒーの淹れ方とか、洗濯物のたたみ方とか、そんな些細なこと。あげればきりがない。何もかもが気に入らない。……くだらなかったね。
同棲し始めたころは、本当に幸せだった。目が覚めたらあなたが隣にいる。毎晩あなたの優しさに抱かれて、夜はとても安らかで。
柔らかな寝息を感じながら眠るのはとても心地よかった。
あなたを前にすると、心が真冬のように冷え切っていくように感じたのはいつからだったか。
あなたはどんどん冷たくなって、この世界の片隅に私を追いやっていった。
言葉とか態度とかじゃない。存在しなくなってしまった。私はあなたの中に。
さようなら。
最後に触れたあなたの頬はとても冷たくて、まるで雪のようだった。
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公開:20/05/27 20:02

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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