クールな街

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 何もかもだめだと思って、路上に出た。こうした衝動が起こるのも月に一度や二度ではなかった。外は、案がい寒かった。

 上京して既に三年がたって、街の風景にも、人の流れにもようやく目が慣れてきたのにも関わらず、周囲の事物は依然として僕にとっては、…よくわからなかった。街は、得体のしれないエネルギーで動く巨大な機械に違いなかった。僕は3年間この街をながめ続けていた。

 僕はいくつかの本によって辛うじてこの世界を紛らわしていた。しかし、どの本の作者さえ決して幸福な生活を送っている訳ではなかった。そうした事実は僕を不安にさせないこともなかった。しかし、誰も不安を解剖できた者はいないという事実は図らずも僕の心に平穏をもたらしていた…。プッツン!

 イヤホンが枝に絡まって勢いよく耳から外れた。しかし、僕は何者かに押されるかのように歩き続けていた…。
その他
公開:20/05/26 17:59
更新:20/06/13 10:49

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