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 妻は飼い猫と通じ合っている。といって別に、スパイ合戦でも不義密通ということでもない。
 妻と飼い猫(以下、猫)とは、一緒にいるときはいつも一緒だ。いや、これでは伝わらないか。
 たとえば妻が眠っているとき、猫も眠っている。身体の右側面を下にすこし背を丸めて、右手が頭の上、左手が顔の前。足の形も同じ。もし妻に尻尾があれば、たぶん猫と同じ形にして寝ているんじゃないかと思うほどだ。という意味で通じ合っている。
 妻がパソコンに向かっているときは猫も同じディスプレイを見ている。タイプミスのビープ音がすれば、顔を見合わせて顔を顰める。トイレも同じタイミング。妻は少し俯いて食事をする。猫もそうだ。
 それでも妻は、猫に嫌われているかもしれない、と僕に訴えかけてくる。猫がじっと妻を見つめる目の奥に何があるのかが分からないから不安なのだという。そして、妻の話を聞いている僕の目は猫にそっくりなのだそうだ。
恋愛
公開:20/05/26 10:58

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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