お母さんが何でも教えてくれる

8
9

いつもはお母さんと川の方へお散歩するのだけれど、今朝は草原に連れて行ってもらった。
色とりどりの花々にそよ風が吹いて、いい気持ち。
あ、草影からそっとバンビが覗いてる。
真っ黒な大きな瞳は怯えたようにじっとこちらを見てる。
薄幸の美少女みたいだ。可愛いなあ。
見とれてぽかんと開けた僕の口からなぜか涎が垂れる。

「近づいちゃダメよ。怖がってすぐ逃げちゃうから」
お母さんと一緒に岩陰に隠れて、バンビを観察する。
「ねえ、お母さん。あのバンビ小さいね。一人ぼっちだね」
「大丈夫よ。こうして待ってれば、大きい母鹿が探しに来るから」

お母さんの言う通り、しばらくすると木立の中から母鹿が現れた。
嬉しそうに駆け寄るバンビ。
「坊や。朝ごはんにしましょう」
お母さんが猛スピードで岩陰から出ると、鹿の親子の姿は見えなくなった。

そして、穏やかな春の光の中で、僕たちはお腹いっぱい朝ごはんを食べた。
その他
公開:20/05/26 08:46
クマが鹿を襲うのは稀 クマは意外とベジタリアン

まくの沙江

自分なりのショートショートができればいいと、投稿させてもらっています。
皆様の作品やコメントは、新しいアイディアが生まれて勉強になります!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容