保存水

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ついに夢を叶えた。
水をフリーズドライ方式で圧縮して、石鹸サイズの真空パックに詰める。軽くて持ち運びしやすく、賞味期限は長い。袋を破れば空気に触れて水になる。1袋で5リットルもの水が流れ出る。
発明したのは私だ。これで、砂漠に住む人たちは、水に困ることなく、喉を潤すことが出来るだろう。
記者から渡された動画を開き、試供品が配られた現地の人の声を聞いて、私は大いに満足した。
「お水が飲める」
「これぞ人間の生活だ!」
やがて、発明者として現地を訪れる機会がやってきた。しかし、見えたのは暑そうに苦しそうにしている人たちだった。
「私たちの水は、借金の肩代わりに持って行かれた」
ああ、困った人を助けるのに必要なのは、発明でなく人の心だった。そちらを研究していればよかった。私は進む道を間違えた。

講義室で教授が言った。
「皆さんはどう思いますか? この人は本当に進む道を間違えたと思いますか?」
SF
公開:20/05/26 22:50
更新:20/05/26 22:53

鳥羽風来

会社員しながら、物語書いています。いつか、文章でお金がもらえるようになりたいなあと思っています。

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