情景画
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情景を描く画家がいる。
風景画でなく情景画。人の感情を写し取って絵にする、心象風景の似姿。友達に付き合って長い列に並んでいる。
笑って、騒いで、果ては泣き出したりする連中を見ながら、下らないと思った。新緑の森。月夜の海。田舎の家。ビル街の青空。人の心がそんな単純で綺麗なものか。
手の込んだサービスカット。みんな解っているから平気なんだろう。真っ赤な嘘でべったりの戯画。一時しのぎの娯楽に過剰反応するだけ損だ。
順番がきて、まず友達が描いてもらう。ベランダに並ぶ洗濯物。同棲中の彼女とは円満らしい。
俺の番。淡々と走る筆が、こぼれたイチゴジャムを描く。包丁とまな板、黒い――
途中でひったくった。追い掛ける声を振り切って走る。
怖かった。
見られたかも知れない。ずっと見えていたのかも知れない。ただ怖かった。
まな板だと思ったのは、道路の石畳だった。
血まみれで転がる黒い頭は、友達の顔をしていた。
風景画でなく情景画。人の感情を写し取って絵にする、心象風景の似姿。友達に付き合って長い列に並んでいる。
笑って、騒いで、果ては泣き出したりする連中を見ながら、下らないと思った。新緑の森。月夜の海。田舎の家。ビル街の青空。人の心がそんな単純で綺麗なものか。
手の込んだサービスカット。みんな解っているから平気なんだろう。真っ赤な嘘でべったりの戯画。一時しのぎの娯楽に過剰反応するだけ損だ。
順番がきて、まず友達が描いてもらう。ベランダに並ぶ洗濯物。同棲中の彼女とは円満らしい。
俺の番。淡々と走る筆が、こぼれたイチゴジャムを描く。包丁とまな板、黒い――
途中でひったくった。追い掛ける声を振り切って走る。
怖かった。
見られたかも知れない。ずっと見えていたのかも知れない。ただ怖かった。
まな板だと思ったのは、道路の石畳だった。
血まみれで転がる黒い頭は、友達の顔をしていた。
その他
公開:20/05/26 21:34
人の心の難しいところ
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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