キス魔女

2
4

あれは高2の新学期のこと。未曾有のウィルスパンデミックにより、クラスメイトと初めて顔を合わせたのはなんと梅雨入りのこのタイミングだった。しかもこんなにジメジメしているにも関わらず、感染対策のマスクは必須だった。
そして隣の席の女子。初めて見る子だが、真っ黒で仰々しい革のマスクをしている。怖い。だが世界がこんなふうになっても俺は俺で、思ったことはすぐ口に出てしまう。「なぁ、そのマスク暑くないの」女子はゆっくりとこちらを見た。「あぁ、これマスクじゃないの」よく見ると耳あたりに鍵穴のパーツがついている。「貞操帯」「テイソウタイ?」「唇用のね」言い終わる前にその女子は僕のマスクをひっぺがし、親指で僕の唇をなめらかに塞いだ。それが僕とキス魔女との出会いだった。
恋愛
公開:20/05/26 19:08

滝藤青瀬

短歌/シナリオ/物語/1994年/愛知県出身
꙳★*゚twitter @genso_aose

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容