おシャクさま

2
3

私は、嫉妬の塊。某中小企業に勤める二児の父。妻は専業主婦。私は猛烈に、幼馴染に嫉妬している。

二秒前までは平気だった。そいつは、三十を過ぎても、まだ夢を追う痛い奴。小説家を目指し、友人から借金をしていた。風の噂で、土地まで借りたと聞いた時は、彼の身を心配したものだ。あ、騙されたな、と。優越感に浸っていた。

そいつが、今、同窓会で隣の席にきた。私より高そうな腕時計をして、私より優雅なふるまいで、会話と食事を楽しんでいる。
私が上から目線で言った。
「まだ小説、書いているんだ」
「ああ。借りたお金を運用して暮らしながらね。借金とか借地とか肩とか、人から何か借りると、成長するスピードが倍。雪だるま式に元手が増えるんだ」
借金するリスクを逆手にとったのか。一方、私は、いくら稼いでも、こづかいの立場から抜け出せない。私は心の中で、精一杯、毒づいてやった。

「なに悟ってやがる。こいつ、シャク」
その他
公開:20/05/26 19:04

久保田 人月

よろしくお願いします。
note「久保田正毅」でも、ショートショートをシェアしています。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容