夢喰い鬼の夢

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今日も食卓には食べ切れないほどの夢が並ぶ。
半分意地のような執念で追った夢は黒っぽく変色し、固くて舌触りもイマイチ。
思い続けていた年月が長く大切に温められてきたものは白濁し、どろりと溶けてだらしのない味がする。
比較的最近思い描かれ、早々に諦められた夢はピチピチと跳ねて新鮮だが、淡白過ぎて物足りない。

夢喰い鬼たちの目の前には、人間が諦めて捨てた夢が毎日届けられたが、どれもこれもうまいとは言い難い代物だ。
「たまにはうまいもん喰いてえなあ」
若い夢喰い鬼が変色した夢を奥歯で噛みながら言う。
「叶った夢は最高だぞ」
「それをたらふく喰うのが夢なんだよ」
「まあ、簡単に諦める奴が多いからな」
「簡単に諦める…か。まったく、人間って奴はろくでもない生き物だな」
「そうか?」
「うまい夢はおあずけかあ」
「お前だって簡単に諦めるじゃないか」
「あ…」
「そんなんじゃ夢はいつまでも夢のままだぜ」
ファンタジー
公開:20/07/25 08:50

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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