潮の匂いがする花火

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イブニングニュースをテレビでみていたときだ。
「本日は、近くの港で漁船をお借りして夕暮れ時の海上より生中継です。天気も良く絶好の花火日和です」
晴れた夏に雨合羽を着た、いかにも暑苦しいアナウンサーが画面に映っていた。
すると、毛筆で『祭り』の文字が背中に書かれたはっぴを着た、漁師のような初老の男性にアナウンサーが声を掛けた。
「潮流花火職人の源さんです。今宵はうまく花火が上がりそうですか?」
「さっき、寒流に青色の火薬を仕込み終わって、今は暖流に赤色の火薬を仕込んでいるところだけれど、いい潮の流れだね」
「海の中に火薬をばらまいて大丈夫でしょうか?」
「海水の温度差だけに反応する特製の火薬さ。安全かつ無害に作ってある。そろそろ暖流が寒流と合流する着火ポイントだよ」
源さんは潮目の方を指差した。
しばらくして日没となり、暗闇かかった夜空には、綺麗な紫色の花火が潮の匂いとともに打ち上がった。
SF
公開:20/07/24 20:17
スクーのお題 「潮の匂いがする花火」 漁船 海上 花火 潮流 寒流 暖流 海水 潮目

山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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