止刑

昨今、人を殺しても精神鑑定に持ち込み、罪から逃れようとする者が多い。
そんな犯罪者達に国家は表に出せない刑罰、『止刑』を人知れず与えている。
今日も連れてこられた被告人を椅子に縛り付けると、止刑を執行する為の薬を打ち込む。
被告人の動きがピタリと止まった。瞬きはおろか、呼吸も止まっている。心臓すらも止まっているが命に別状はない。
止刑は国民の「犯罪者に税金で飯を食わせるな！」という意見を聞き、取り入れられた刑罰である。
止刑の執行中は食事も睡眠も排便も必要としない。次の裁判が始まるまで、ずっと被告人は止まり続けている。
以前、薬のミスから１時間で止刑から目覚めた男が「全部正直に話すから、もうやめてくれ！」と止刑の中止を願った。
男は言った。
「止刑中、体は動かせないけど意思はあるんだ…そんな状態が６０年続いた…」
止刑は１分を１年と感じるのか…
それを理解した上で止刑は今も行われている。