夜祭り
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「見てるだけだからな」
「お兄ちゃん。それ、聞き飽きたよ。あ、ほらあれ何かな、美味しそう!」
無邪気な弟は兄の浴衣の袖を引っ張る。
「兄ちゃんと一緒に居たければ、絶対に食べちゃ駄目だ。帰れなくなる」
「ちぇ、ちょっと言ってみただけだよ。どうせお金ないし」
袖を振りながら、あちこち羨ましそうに見回した。ガラスのような美しい飴細工や宝石のような金魚が明かりでキラキラと輝いている。
「あ! あのお面、僕が好きなヒーローだ」
思わず走り出した弟を制止するが、兄の声は賑わう声に吸い込まれた。
「駄目だ!」
兄は何とか追い付いたが、くるりと振り返った弟の顔にはヒーローのお面がついていた。
「ーー兄ちゃん?」
お面を取ると、兄の姿はなかった。
「今度は長生きしろよ」
兄の声が遠くで聞こえた気がした。
ある朝早く、一つの新しい命が誕生した。
「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」
「お兄ちゃん。それ、聞き飽きたよ。あ、ほらあれ何かな、美味しそう!」
無邪気な弟は兄の浴衣の袖を引っ張る。
「兄ちゃんと一緒に居たければ、絶対に食べちゃ駄目だ。帰れなくなる」
「ちぇ、ちょっと言ってみただけだよ。どうせお金ないし」
袖を振りながら、あちこち羨ましそうに見回した。ガラスのような美しい飴細工や宝石のような金魚が明かりでキラキラと輝いている。
「あ! あのお面、僕が好きなヒーローだ」
思わず走り出した弟を制止するが、兄の声は賑わう声に吸い込まれた。
「駄目だ!」
兄は何とか追い付いたが、くるりと振り返った弟の顔にはヒーローのお面がついていた。
「ーー兄ちゃん?」
お面を取ると、兄の姿はなかった。
「今度は長生きしろよ」
兄の声が遠くで聞こえた気がした。
ある朝早く、一つの新しい命が誕生した。
「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」
その他
公開:20/07/25 16:57
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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