8
5

彼の姿を見ると、人々は畏怖の表情を浮かべ脱兎の如く逃げ出す。

彼は化として生まれた自分の運命を呪っていた。
私は受け入れるべきだといつも説得したが、彼は納得しなかった。
彼は人々の笑顔が見たかったのだ。

「俺は、俺として生きる」

彼は彩り豊かな草で出来た冠を被り、お尻に火をつけて空へ舞い上がった。
そして命と引き換えに、夏の夜空を彩った。

願わくば、それを見た人々の表情を彼に見せたかった。

私は彼のこんな姿に惚れていた事を思い出していた。
だから、私も彼と同じ冠を被った。
その他
公開:20/07/25 11:35

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容