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『今年はコロナの影響もあって帰れそうにない』
実家にそう連絡すると後日、母が箱海を送って来た。
添えられた手紙には「今年はコロナの影響で海開きも出来ないから海を譲って貰えた」と書いてある。
日頃の疲れもあってか、俺はぼんやりと箱海を眺め続けた。
「何見てるの?」
彼女が箱海を物珍しそうに見る。
「箱海だよ。俺の故郷の海を切り取って箱に入れたもの。一緒に見る?」
彼女は頷き、隣に腰を下ろした。
それから二人、漣を耳に、日が暮れるまで箱海を眺め続けた。
「ねぇ、この海連れてってよ」
「いいけど…何でまた?」
「私、海なし県出身でしょ。海にずっと憧れがあったの。私も箱海欲しいなって思って」
「だったら、この海じゃなくても良くない?他にいい海いっぱいあるよ」
「ううん。ここ以上の海なんてないよ。貴方と二人で、ずっと見ていられる海はここしかないんだから」
どうやら今度の帰省は結婚報告にもなりそうだ。
公開:20/07/23 19:35

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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