4
4

「君の長所を最大限に活かして頑張ってくれたまえ!」

新入社員の沢村はその長所を買われ、カスタマーセンターへと配属された。
強引な売り込みで有名な企業だけに、寄せられるクレームの量もかなり多い。

沢村の前には電話機がズラリと並ぶ。営業開始とともに鳴り響く電話たち。
待ってましたとばかりに受話器を取る沢村。それも次々と取る。気づけば10個の受話器を巧みに操りながら、クレーム対応をしている。
「彼が聖徳太子の生まれ変わりだって噂も頷けるな」上司も満足そうだ。

それからすぐに沢村は電話に出なくなった。ただただ眺めているばかり。結局その日、沢村が電話に出ることはなかった。

「なぜ電話に出なかった?」上司が詰め寄る。
「それが……」
「10人の話を同時に聞けるという長所は嘘だったのかね?」
「いやぁ、同時に10人の話を聞けるのですが――1日10人までしか話を聞けない短所がありまして」
その他
公開:20/07/23 19:05
電話 カスタマーセンター

ときわひでたか(常盤 英孝)( 大阪 )

《3分後にはもう、別世界。》
ショートショートを執筆する、超短編小説家。

ショートショートの魅力である驚き・衝撃・裏切り・どんでん返しの展開を楽しんでいただければ幸いです。

★Amazon Kindleで『妄想するショートショート』販売中!
https://www.amazon.co.jp/dp/B07WPH1CDH?tag=naniwayorozu-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1

◇ショートショート作品は小説投稿サイト『エブリスタ』で発表しています。
https://estar.jp/users/155269596

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容