海中電灯

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海好きの友人の家へ遊びに行ったときのことだ。
部屋に懐中電灯らしきものが大事そうに飾ってあったので尋ねてみた。
「これかい? よく気づいてくれたね。浜辺のフリーマーケットで偶然見つけたお宝さ。懐中電灯に見えるけれど、漢字で『海中電灯』と書くんだ。この海中電灯は、周りの暗さによって浅い海から深い海まで照らし出すんだ。今は明るいから、浅瀬の海の様子が映るよ」
不思議なことに海中電灯で照らし出したところだけ海の様子が映っていた。太陽光が届く程度の深さの海を泳ぐ小魚や揺れる海藻が見えた。
次に友人は、部屋を真っ暗にした。
海中電灯を照らし出したところに、深海に棲息するダイオウイカやチョウチンアンコウ、リュウグウノツカイが見えた。
目を丸くしていると友人は言った。
「驚いたかい? 深海では他にも面白いものと遭遇するよ」
すると深海探査艇「しんかい六五〇〇」がこちらに向けてサーチライトで照らしていた。
SF
公開:20/07/23 07:00
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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