息子が社会人になっても親心

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僕は彼女を連れて初めて実家に帰った。
母は簡単に世間話をした後、彼女に僕が子供の頃の話を聞かせた。
「この子はよう勉強はできるほうだったです。それなんに、なぜ大学受からなんだか不思議でねえ」
僕は拳をぎゅっと握り、申し訳ない気持ちで言った。
「あのさ、今まで恥ずかしくて言えんかったけど、実はあの日バスに乗り遅れて、ちゃんと試験受けられんかったんよ」
「は? アンタ馬鹿ね!?」
母は口をあんぐりさせて僕を見つめた。
「うん、黙っててごめん。でもそのおかげで彼女にも会えたし、結果的にこれで良かったと思ってるよ」
「大学行かんの!」
「いや、だってもう社会人だし。仕事もあるし」
「社会人だっていいでしょうに。もう一回ちゃんと試験受けて大学行ったらどうね?」
母は頑なに瞬きもせずに僕を見つめていた。
こんな馬鹿な僕のことを、今でも一途に信じてくれている。
なぜか泣きそうになって、ぐっと堪えた。
その他
公開:20/07/23 01:51
更新:20/07/23 01:59

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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