赤いタンバリン

4
4

葬式からの帰り道、境内の方から錫杖が鳴る様な音が聞こえてきた。
石段を上ると、社の前で着物を着た女が倒れていた。
近づいて横顔を覗けば、死んだ女房と瓜二つ。抱え起こしてみると、女は目に溢れんばかりの涙を湛えていた。
私の口から自然と女房の名が出る。すると、その白い腕が私の首元へと伸びてきた。
「どけ」
後ろで声がしたので振り向くと、ひとりの山伏が私達を睥睨していた。

「この曲木みたいのを鳥居と同じ色で塗ってから“化けの皮”を張り付けるんだ。そんで皮を叩くと周りの鉄輪が鳴り、その音色が同じような化け物を誘き寄せる。この女狐もそうよ、うまく掛かったんで皮を剥ごうと思ったら、あんたが来た。なんとか取り入ろうとしたみたいだがな、そうは問屋が卸さんよ。ほら、この通りにな」
妻の姿と“女”の姿が交互に浮かぶ。
手渡されたものの皮に触れると、それだけで鉄輪が泣く様に鳴り響いた。
ホラー
公開:20/07/24 10:49
更新:20/07/25 20:23

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容