真夏の雪

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船はつねに球体の真ん中にいた。
風はない。どうせあてのない航海だ。進まなくとも困りはしない。
水面は細かく煌めき、空は一面透き通っている。飛沫が飛んだのか船の一部も煌めいている。
水平線は見えるが、その向こうに何も求めてはいない。ただそこにいるだけだ。
退屈かもしれない。けれど退屈は時に贅沢でもある。理不尽な世の中を生きていくには必要な浮遊時間だと、僕は思う。
だから、一緒にどうかな?

…僕は手にしていたそれを振って、デスクの上に置く。

エアコンの風も上司の罵声も受け付けないスノードーム。
その中の船に、静かに舞い散る雪を見つめるだけの真夏の現実逃避、只今参加者募集中。
その他
公開:20/07/24 08:45

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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