修羅の国

18
6

騎士が剣の柄尻に手を乗せて言った。
「覚悟があるなら武器を持て」
少年の前には血の付いた父の短刀が落ちていた。
腕を伸ばして、掴もうとした手が震えて止まる。
殺される。
命乞いをするのか? この男に!
愛する家族はもういない。
自分だけ生き残ってどうする?
自害したほうがまだいい。
でも、自害するのは怖い。
だったらせめて——。
少年は覚悟して短刀を強く掴んだ。
「武器をとったな? お前のような幼いガキでもそいつを使えば大人を殺せる。故に殺されても仕方のないこと」
騎士は歪な笑みを浮かべ剣を引き抜いた。
人殺しのくせに何を言い訳してるんだ、この男は!
少年は飛びかかった。
騎士も振りかぶった。すると、長剣の先が梁に刺さった。
間抜けな奴!
少年の短刀が騎士の首にぶすっと入った。
引き抜くと血が溢れた。
なぜか男の死相が嗤って見えた。
これでお前も人殺しの仲間だ。
そう言っている気がした。
ファンタジー
公開:20/07/24 01:51

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容