行列鑑定士

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最近は行列の質が著しく落ちている。
例えばラーメン屋の行列。10人並んでいるとすれば
本当にそこのラーメンが食べたくて並んでいるのは2,3人だ。
それ以外は行列だから並んでいる。行列としての純度は低い。
新商品発売のソレはおおよそが転売目的で不純物が多い。

私は行列鑑定士を生業としている。
世間での認知はまだ低い。
そんな私は今ある行列に並んでいる。
行列と呼ぶには規模は小さいが
見かけた時はまるで砂金を見つけたような気分だった。
私の前には5人の小学生が並んでいる。
彼らの目は輝き、手に入れた時の喜びを倍増させる準備を楽しみながら行列を構成している。
大物ばかりを求めていた自分の欲深さを反省した。

手持ち花火のごとく先に行列から放たれた笑顔が私の横で弾けている。
私が見たかったのはこれだ。

私の番がやってきた。ソースの香りが食欲をそそる。
「8個ください。マヨネーズありで。」
その他
公開:20/07/21 23:25

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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