その狭き道を渡れ

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その道を踏破したものは誰もいない。細く長いその道は、すこしの油断が命とりだ。先を行く彼の仲間たちも次々と転落していった。
怖じ気づいた彼に、後ろで待つカケルが言った。
「ユウヤ、お前ならやれるよ。サイキルートを制覇したお前なら」
その声に励まされ、彼はその狭き道に足を踏み出した。

あと1メートルのところで、彼は転落した。
アスファルトに尻もちをつくと、「くっそっ」と毒づいた。
「やっぱ無理かー」
そう言いながら、カケルは預かっていたランドセルをユウヤに手渡した。
「ここん家の塀、全然持つとこないんだもん。それに長すぎ」
「サイキさん家は木の柵だったから、オレだって半分は行けたんだけどな」
いま彼らのあいだでは、『家の塀の下と道路の境にあるちょっとだけ段のある部分』を通って学校から帰るのが流行っている。

この最高難度のタカナシルート、未だ踏破したものは、いない。
その他
公開:20/07/21 20:29

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

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