整列な愛

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夕方だった。ビルの八階のカフェで彼女と向き合う窓際のテーブル。ガラス窓越しに観覧車が回っている。
つきあって一年。新鮮な気持ちがこのごろは失せてきた。惰性の時期だろうか。ぼくは彼女が好きだ。でも自分の気持ちにどこか確信がもてない。彼女の気持ちはどうなのだろう。こんな不安はつきあい始めた二人には普通なのだろうか。
彼女の顔が観覧車の輪の右端に接する位置にある。観覧車のカゴが次々に降りてきては彼女の顔に隠れる。
とりとめのない話をぼくたちは続ける。彼女は真正面からぼくの顔を見つめている。
観覧車の向こうに陽が沈む。彼女の顔が日食のように太陽と重なってその間に観覧車のカゴがぴったりと入った。
「整列した」ぼくは思わず口にした。
「ええ、いま整列したわ」
「え?」
「私と太陽と観覧車とあなたの目が整列したわ。ずっとあなたの瞳に映ってるの」
聞いたしゅんかんにぼくは彼女への愛を百パーセント確信した。
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公開:20/07/21 17:44

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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