夕方の地下鉄

この地下鉄は夕方になると、会社帰りの人たちで沸き返る。

ある日の夕方、通勤客が一人もいないのに運転手が気付いた。

それは、不思議な日だった。

その次の日も、その次の日も、一人も乗らない。

不思議に思った運転手は、次の日同僚に言った。

近頃、誰も乗らないんだよね。

そうすると、同僚は言った。

お前が運んでた乗客は、前から一人もいないよ。

なぜなら、お前はとっくの昔に死んでるんだから。

それを聞くと、運転手は、思い出した。

僕は撮り鉄であの日の夕方、地下鉄に轢かれたっけ。

そう、あの日は夕方だったのだ。