スーパーでの葛藤

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 私は迷っている。醤油味にするか、豆乳味にするか。食品売場で特売のカップ麺『デッドヌードル』二種類を前に、もう既に十五分は悩んでいる。お一人様一個限り。どちらかしか買えないのだ。
「相当悩まれてますね」
 近くで商品陳列をしている店員が声をかけてきた。
「そうなんですよ。王道をいくか邪道をいくか…」
 無難なのは醤油味だ。昔から味も知っている。しかし豆乳味は食べたことがない新商品。しかしそれを食べて不味かったら、損した気分になるだろう。
「お客さん、仮に豆乳味を買って、不味かったとしましょう。嫌なことにお金と時間を費やしたと思うでしょう。しかし、経験は得られます。醤油味を選べば、豆乳味を知らない毎日をまた過ごすことになる。」
 店員の言葉に、私は決意を固めた。豆乳味のカップ麺を買い物かごに入れた。すると、今取った豆乳味の陰に、おしるこ味のカップ麺が隠れていた。これも食べたことがない。
その他
公開:20/07/20 00:12
更新:20/07/20 00:17

秋村ふみ( 青森県 )

300文字という限られた空間で、自分なりのモノガタリを描かせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

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