彼女の願い

私には霊感がある。それが今、私を凄く悩ませる。
『お願い！私を中に入れて！』
幼い頃、事故で死んでしまった亜希が大人になった私に頼み込む。
嫌だ。私に憑りついてどうするつもりだ？分かっている。私の彼を奪うつもりだろう。
亜希はいつも彼と一緒にいた。亜希が彼の事が好きなんだと知りつつ、私は彼と付き合っている。
『そんなんじゃないってば。私を信じてよ』
亜希は嘘を吐くような子ではない。だからその熱意に負け、渋々ではあるが私の中に入れてやった。
『ありがとう』
亜希は私の中に入る。それだけで本当に何もしなかった。

時は経ち、私は彼と結婚し、子宝にも恵まれた。
はっと気が付いた。亜希は私の体を使って生まれ直すつもりなんだ。
でもごめん…ウチはもう男の子３人で手一杯なんだ…
長男が笑顔で私の肩を叩く。
「謝る事ないよ。私は昔から男になりたかったんだ。だって私が好きなのは彼じゃなくて貴方なんだから」