母の勘！

「あれま…。」
久しぶりに家に戻ると、テーブルの上にかすていらがちょこんと座っていた。
「食べるかなと思って。」
買って来てくれたのだそうだ。
ちょうど昨日、何とはなしにかすていらが食べたいな、と思っていたところだった。それが手妻のように出てきたのだから、ちょっと戸惑ってしまった。
だが、珍しいことではない。昔から、あれが欲しいな、とか、これが食べたいな、とか、さり気ない望みは、まるで風が香りを運ぶように目の前に現れた。
母親にはすっかり思考がバレているらしい。はたまた”母”という存在は皆エスパーなのか。
女の勘は鋭い。されど母の勘はもっと鋭い。
しかし、このかすていらは美味い。

翌週。
久しぶりにコンビニにコロッケでも買いに行こうか、と出かけようとしたのを呼び止めた電話。
「コロッケ作ったけど、食べる？」
「何で分かるの！！」