青春イタリアン

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部活が終わり、夕日色に染まる帰り道を私たちは自転車を押しながら歩く。

『実は、良いイタリアンの店があってな。』
「イタリアン?圭一、そんなにオシャレな人だったっけ。」
『おい、あんまり俺をナメんなよ。スパゲッティくらい啜らずに食えるさ。』
「へへ。」
思わず笑みがこぼれた。
『麻友子、明日、お前の誕生日だろ?』
「うん、そうだけど。」
『明日の放課後はイタリアンに行こう。もちろん俺のおごりでな。』
「うれしい。けど少し無理してない?アルバイトでお金貯めてギター買うんでしょ?」
『いいんだよ。せっかくの主役が気を遣うな。』

次の日、約束通り圭一は私をイタリアンのお店に連れて行ってくれた。

『熱いから気をつけて食えよな。』
「ふふ、美味しい。」

あの日、彼と食べた299円のミラノ風ドリアは、身も心もぽかぽかにしてくれた。
青春
公開:20/07/18 21:12
更新:20/07/19 17:46

日常のソクラテス( 神奈川 )

空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)

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