『風船ヘアー』

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リビングで宿題をする私の隣に父が座って新聞を読み始めた。でもいつもと何か違う。薄毛の父の頭がかなり黒くなっている。
「やっと気づいたか」と嬉しそう頭を優しく撫でる父。
「風船ヘアーと言ってな、細い注射器を使って髪の毛に空気を入れてボリュームを出すんだ。そこら辺の空気を入れるだけだから、値段もお手頃なんだぞ」
ふーん、そんなものがあるんだ。確かによく見ると、髪の毛の一本一本がかなり膨らんでいる。
間近で見るとよくわかった。これは風ですごく揺れそうだな、なんて思いながら、私はちょうど握っていたシャープペンでそのうちの一本を突いてみた。
「おい、やめろ!」
パン、と大きな音と共に髪の毛は破裂してしまう。
その衝撃で隣の毛、またその隣の毛も、結局全ての毛が割れてしまった。
「風船と同じなんだ、簡単に割れてしまうんだよ」
悲しげな父の頭はあっという間に元通りになってしまった。
ファンタジー
公開:20/07/19 21:00
更新:20/07/18 21:01

白川湊太郎( 東京 )

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