部首体験キット(つづき)

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次にぼくが選んだのは、きへんの【木】だ。それを床に置いてまたがると宙に浮いた。そのとたん、部屋の窓からジェット機のように空へ向かって飛び立った。
しばらく空の景色を楽しんでいると、次第に山奥へと進んでいった。そして、火山の噴火で荒れ地となったあたりの上空を旋回しはじめた。
すると、何もなかった荒れ地にコケや草が生え、やがて野生の草原になった。日あたりが良いのでアカマツなどの陽“樹”が生え、幼“木”から高“木”に生長して陽“樹林”となると、今度は“林”の内部の日あたりが悪いのでシイやカシなどの陰“樹”が増えてきた。陰“樹”が生長してくると陽“樹”は枯れ、陰“樹林”となって安定した。さらに陰“樹林”が増えて“森”となると殆ど変化がなくなったーー。
“木”から“林”、そして“森”へと遷り変わる様子を猛スピードで目の当たりにした。
部首体験キットは、漢字の部首から理科も学べるすぐれた副教材だった。
その他
公開:20/07/18 07:40
『とってもふしぎな創作ドリル』 「部首体験キット」 きへん 陽樹 幼木 高木 陰樹

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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