建て替え

　ある時、長く家にあった既に使い物にならない小型のブラウン管テレビを近所のゴミ集積場近くの草むらに放置した。
　これがルール違反であることは分かっていた。
　だがそれ以来、その場所の横を通ると自分が捨てたテレビに心が痛んだ。ひと月が過ぎても草むらでそのままのテレビに、とうとう耐えられず、ある晩、心を入れ替えてテレビを回収しに行った。テレビを持ち上げると、その下には、丸っこいのやひょろ長いヤツやら、月明かりの元、生き物の世界が出来ていた。私は彼らの家を奪うのかと思い、それもまた心が痛み、そばからコンクリートブロックを拾ってきて代わりにおいてやった。けれどそれも誰かによってしばらくするとどけられて、同じところに木切れが一枚転がっていた。
　下に住んでいた彼らにすれば、樹脂と金属の未来的な家からコンクリむき出しの頑丈モダンな家になり、最後は木造の吹けば飛ぶような家になっていったのだった。