開°セミナー

「こ°るこ°んそ°ーら」
と最高顧問講師（以下「講師」）が声を上げると、セミナー参加者も一斉にその「音」を真似ようとした。
「閉めるから苦しい。開いているととても楽」
　講師は年齢不詳の男性だ。
「産まれて「ギ」ャーと泣くから苦しい生を約束されてしまう。「ギ」なんて息を締めるのは苦しくて辛いこと。息をつめてはいけない。あえて言うわ「ゼ」ッタイ「ダ」メ。今はこれを心にしまっておいて」
　みな頷きながら聞いている。涙ぐんでいる者もいる。
「死は苦しくない。苦しいのは己の息穴を締めるから。息を捕らえておこうとするからよ。息を捕らえようとしてはいけない。怖い？　怖くないよ。さ、大きく開いて。安心して」
　講師は「濁音」こそが人の業だと説き、我慢の顕れである濁音を半濁音に置き換えることから始めれば、次第に苦しみから解放されると説く。
「こ°るこ°んそ°ーら！」
「こ°るこ°んそ°ーら！」