姓名維持装置

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自由に改名できる時代だ。
彩子もその一人だった。「子」という響きが時代錯誤な感じがして嫌だわ、と改名を決意した。
出生時から脳に埋め込んでいた姓名維持装置を今から外し、新しい物を私が埋める。彩子としての記憶は消去するが、肉体は今のまま、新しい名前で生きる事になる。
「パパ。私、彩音になるね…。今までありがとう」涙ぐんだ彩子を私は強く抱き締めた。
彩子は決心し、装置を外した。そして、静かに倒れた。私はすぐ彩音が記憶された装置を埋める。名前の上書きまでタイムラグがあり、その間は代名詞で呼ぶルールだ。前の名前で呼べば登録が無効化されてしまう。
「彼女、おい彼女っ!」私が肩を揺すると少女は目を徐々に開けた。「起きたか彼女!」「んー…オッサン誰?てか彼女彼女うっせぇんだよ!アンタの彼女じゃねーし!きもっ!アタシ彩音だから!」
そう。覚悟していたが人格も変わる。これは新たな父親になる者への洗礼である。
SF
公開:20/07/17 14:51
更新:20/07/18 00:40
400字

文豪たこ( 神奈川 )

「30秒後に意外な結末」がテーマの140字ショートショーティスト。

面白ければそれでよし、と思って書く日々。

2020.7.15『影ができるスプレー』を初投稿。以降、約半年で150作品を執筆。

◎2020.11.15『ハロウィンの怪人』急上昇ランキング2位
◎12.05『星を見つけた』急上昇ランキング1位
◎12.19『無視される日本語』急上昇ランキング3位
◎12.25『高給な副業』急上昇ランキング3位
◎2021.2.6『ひねくれもの』急上昇ランキング2位

皆様からの「面白かった」が聞ければ、それ以上の喜びはありません。

Twitterでも活動中!
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