潮の香りがする花火

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君を誘って海に来た。梅雨の明けた日曜日のことだ。
ホントはこんな炎天下、出かけたくなんかない。
でも君が海が好きだと言ったから、思わずドライブに誘ってしまったのだ。
君の髪が旗巻いて、車内を潮風が包むと、やがて窓から真っ青な海が現れた。
海の家に行き、水着に着替え、浜辺を走って、砂まみれになった。
夏の長い日があっという間に暮れる。
名残惜しくなって最後、花火をやろうと提案した。
花火とバケツを持って桟橋に行くと、目の前で太陽が海に帰ろうとしていた。
最後の線香花火に火をつけたとき、辺りはすっかり日が陰り、花火の仄かな光の向こうにオレンジ色の笑顔が見えた。
火の玉を見つめたまま、あなたに「好き」と言った。
「ごめん、好きな人いる」とあなたは答えた。
線香花火と、涙が、ポタッと落ちた。
「そっか」振り切るように立ち上がった。

涙をすすると、潮と花火の残香がふわっと匂った。
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公開:20/07/17 00:08
#Schoo #スクー #潮の香りがする花火

にしむー

ショートショートガーデン初心者です。
こっそりひっそり、物語書きます。
本屋と活字にテンションが上がりまくる性質です。
ステキなストーリーに出会えますように。

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