愛をください

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彼は愛が深いのだと思っていた。家族以外でも身近な人の誕生日はマメに祝い、お祝い事や節目にはサプライズを用意する。何より困っている人がいたらすぐ手を貸す。自分の時間を削ってでも。

だからこそ彼の無尽蔵に出てくる愛は、いつかそれでも尽きてしまうのではないかと。彼があまり出来た人なので、私は余計なお世話を考えてしまう。

ある日木々の小道を入っていく彼を見かけた。そっちには湖しかないはずだ。どきどきしながら私は彼の後をつけた。

記憶の中の湖より水は少なくなっていた。そう思った時はちょうど彼が湖に入るところで、止める間もなく水に体を浸けた彼は、そのまま溶けた。間違いない。液体になったのだ。

放心してると彼は何事もなかったかのようにあがってきて、私を見つけた。

聞けばここは愛の湖。足りなくなったらここで補充しているのだと言う。

ねえ、そしたらやはり、あなたの愛は湖とともに尽きてしまうのだ。
公開:20/07/17 22:30

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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