『虹を見てくれ』

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わしは天気の神様、天気を思うがままに操っておる。
一番やりがいがあるのは虹を出すとき。特に人の多いところでは大勢で喜んでもらえるので、こちらも大変満足できるのだ。
今日の担当はオフィス街、みな忙しそうに早歩きをしておる。
さあここで一仕事、パッと虹を出してみせる。
だが地上には暗そうに俯いて歩く者、スマホを通してビデオ通話をしている者。誰一人として虹が出ていることに気がついてくれない。
どうにかして虹を、空を見てくれないだろうか、下を向く者たちに私が伝える方法は…よし!
スマホに夢中な者の頭にポツリを一滴雨を落とす、それでは気づかない。ポツリ、ポツリ、顔上げてもらいたくて少しずつ落とす雨の量を増やしていく。
「ん、雨か」
やっとの思いで顔を上げてもらえた。よし、早く虹を見ておくれ…と思ったがその頃には虹は消えており、空は雨雲で埋め尽くされておった。
SF
公開:20/07/17 21:37

白川湊太郎( 東京 )

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