ネオリトマス試験紙

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政権中枢で首相補佐官として活躍する、ある大物政治家から地衣植物研究所に依頼があり、リトマスと呼ぶ苔を遺伝子操作した。
理科の実験で用いられる指示薬の一つにリトマス試験紙がある。この試験紙にリトマス苔が使われており、青の試験紙が赤に変色したら酸性、赤の試験紙が青に変色したらアルカリ性、どちらの試験紙でも色が変わらなかったら中性だ。
国民からの支持率を気にする首相のため、補佐官は二種類のネオリトマス試験紙で政権運営を日夜判定する。青の試験紙が赤に変色したら賛成、赤の試験紙が青に変色したら反対、どちらの試験紙でも色が変わらなかったら賛成でも反対でもない中立だ。
見た目は普通のリトマス試験紙だが、対立する二つの意見や方策などの是非、真偽、効能を判定し、物事を見極める画期的な尺度となった。
ネオリトマス試験紙のお蔭で、政権与党は国政選挙で常に圧勝、首相は歴代で最も在任期間が長い金字塔を打ち立てた。
その他
公開:20/07/17 19:40
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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