河童不動産②

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河童不動産に、ボロ雑巾みたいな爺さんが入ってきた。
「げっ、貧乏神、さま。確か、文殊菩薩さまのお堂にお住まいになったばかりですよね」
河童の銀次が声をかける。文殊菩薩の仏像が何者かに盗まれたお堂に無理やり住みついていた。
「釣りに出掛けた隙にお堂の前にあいつが座り込んで中に入れぬ。話しかけても黙りこんでるのだ」
銀次と新入りの佐助がお堂を見に行くと、白い象が座り込んでいた。
「野良象っているんですね」と佐助が口をぽかんと開けた。
しばらく白い象を見つめていると、どどどと、走り込んできた輩がいた。
「人間だ」
銀次が佐助の腕を引っ付かんで草むらに隠れる。
「申し訳ございませんでした。お返しします。なので、どうか踏み潰さないでください」
「そうか、文殊菩薩さまの相方が乗ってる白象だ」
「銀次さん、言い方」
文殊菩薩さまは獅子に、普賢菩薩さまは白象に乗り、釈迦如来さまを支えている。
その他
公開:20/07/15 21:01

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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