釣り

夜、海岸を歩いていると釣り人に遭遇した。
「釣れますか？」
そう聞くと釣り人は『ええ、ちょっとずつですが探していた魚に巡り合えています』と答えた。
この人は珍しい魚を狙っているのだろうか？
「どんな魚か見せて貰ってもいいですか？」
『ええ、どうぞ』
クーラーボックスを覗いて、僕は腰を抜かした。
『おや？初めて見ますか？シラウオノテ。アシウオ。カミノケクラゲ。マタカニ。ドウタコ。おっ！やっとウオノメが二つ釣れたぞ』
喜ぶ釣り人から距離を取る。
クーラーボックスの中に入っていたのは僕がバラバラにして捨てた女の死体だった。
『全部のパーツを集めるとねぇ…娘が生き返るんですよ…』
うっとりと語る釣り人。
クーラーボックスから這い出して来る腕。僕の体を絡め取る髪の毛。クーラーボックスに引きずり込まれる僕の体。
『ありゃ？誰もいない…儂の話はつまらんから帰っちまったか…』
釣り人は再び釣りに集中した。