バイトの手触り

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私が働く暴力団事務所は古い雑居ビルの中にあって、そのビルの一階にはかつて公衆電話が置かれていた石造りのブースがある。そのブースにはガラスコップに造花が一輪さして置いてあり、私は毎日悲しい気持ちでそれを見ていた。
造花といってもそれは蕾が垂れているだけで花は咲いておらず、コップには無駄に水が入っていて、その水は虹色に腐って悪臭がする。前を通る組員や会社社長や医師や議員の誰もが、それを見ないふりで2階の賭場に出入りしていた。
私はバイトの組長だから暴力団的な行為とは無関係だけど、給料の出どころを考えれば気持ちは暗くなる。
賭場が開かれた夜、私は警察に通報し、組員や会社社長や医師や議員の皆が逮捕された。驚いたのは全員がバイトだからと言い逃れを始めたこと。私はバイトという働き方を蔑ろにされた気がして、コップの腐った水を捨てて美しい大麻草を飾った。そして私はバイトの警官と手を繋いでそのビルを出たの。
公開:20/07/16 16:24

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