砂漠を飲む

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「砂漠を飲む。それくらいの覚悟でいてください」
「は?」
「気温の変化が激しいでしょう。砂漠ってとこは。もう暑くて無理と思っても、夜は氷点下になるところもある。そしたら暑くて苦痛だったはずの日中が恋しくなるはずです。生きるために熱を欲して砂を飲む選択肢も出てくるわけですよ。でも翌日になれば、飲んだ砂のせいでさらに喉はカラカラ。その繰り返しです」
「繰り返し…」
「はい。繰り返しです。それも凝縮版の」
この時の私は、先生の話のほとんどを理解できなかったが、すぐに痛感する事となる。

これが凝縮版…。


壮絶な戦いは十二時間続いた。心身共にボロボロになった私は、何日も砂漠を放浪した旅人のように疲弊しきっていた。
「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」
対面した我が子は、何とかこの世と意識を繋いでくれるオアシスのようだった。
その他
公開:20/07/16 13:22
更新:20/07/17 23:31

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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