頭の接着剤

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少年の母親は教育熱心だった。
はじめは習い事をさせたり塾に通わせる程度だったが、次第にそれはエスカレートした。
最終的に行きついた先が脳に特殊な接着剤を注入することだった。
その接着剤は、インプットしたすべてのことを頭のなかにくっつけておけるというもの。
接着剤を注入された少年は、母親の期待通りの天才になった。
あらゆることを記憶することができた少年は、9歳にして東大に合格する学力を身につけた。
しかし、少年は10歳の誕生日に急死することになる。
「忘れたい……。すべてが脳にはりついて離れないんだ……」
それが最後の言葉だった。
公開:20/07/14 22:25

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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