彼女の彼　後編

彼と彼女がつきあうようになってから一度だけ、彼と私が２人っきりになったことがある。

秋が深まる日曜日。３人で模試を受けに行くはずだったのに、彼女は風邪を引いてしまった。

帰りに３人でランチ、と約束していた。「せっかくだから、２人で食べようよ」。彼が誘ってくれた。

彼がネットで調べてくれた、３人で行くはずだった模試会場近くのイタリアン。こじゃれた小さなレストランで、ちょっと背伸びした気持ちになって、マルゲリータとペペロンチーノを２人でシェアした。

いましかない、コクっちゃおうか。

「アイツ、大丈夫かな？」。ふと、彼がもらした。

なんか、彼女に申し訳ない気持ちになった。好きって言うのは、やめた。

彼と別れた帰り道、涙がこぼれた。

あれから何年経っただろうか。

あの頃の私に、伝えてあげたい。

そうやってドキドキできたり、泣いたりできるのって、１０代の特権なんだよって。