9.ストーリーミング

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眠い目を擦り暗闇を歩いていると、炎の揺らぎが見えた。
「やぁ、旅の方」
焚火の側には羽根冠を被った老人。インディアンのようだ。
「私は潜在意識の住眠、潜住眠のレム。さぁ、今宵も物語を話そう」
語られた物語はどれも現実離れしていた。歩く給油所、麺の街、人を癒す戦闘機。
『あなたが考えたんですか?よくこんなにネタが降ってくる』
作家志望の僕は尋ねた。
「物語のネタは降ってくるのではなく、そのタネは自分の中に眠っていて、何かの拍子に芽を出す」
炎の中で薪が爆ぜた。
「自分の気持ちに目を向けてごらんなさい」
レムは笑い、僕は眠った。

目覚めると朝だった。自分の部屋だ。
羽根冠型の睡眠具を僕は外した。睡眠中にストリーミング再生で学習できる機器だ。
『よく寝たなぁ』
夢なら忘れてしまうのに、レムの話はダウンロードされたように鮮明に覚えていた。
『あっ、浮かんできた』
さぁ、今日も一日良い夢を見よう。
ファンタジー
公開:20/07/15 13:36

そるとばたあ( 神奈川 )

★そるとばたあの400字SSは、ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語がコンセプトです!

★第19回坊っちゃん文学賞大賞『ジャイアントキリン群』

★2025年12月、2冊同時刊行の電子書籍
『3分間のまどろみ カプセルストーリー』(Gakken)に『恐竜バーガー』寄稿。

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の選択』、六文字の返信ほか)
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ショートショートの可能性と豊かさが詰まったアンソロジーですのでぜひ!
 

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