天才小説家の苦悩

「先生！　ベストセラーです！　いや先生は凄い！　先生が芥木賞受賞者最年少記録を塗り替え2年。20歳にしてこの人気。10年先までスケジュールはギッシリです！　次はノーベル賞かな？！　わっははは！　今回の若き人気小説家が全てを投げ捨てて遊園地のダンサーになる夢を追う作品。リアルな心理描写がウケたんだな〜。ファンに大好評です！　また書けたら連絡ください！」
「…あ。そう」

「先生！　今回ばかりはさすがに私も肝を冷やしましたがまたベストセラー！　白紙の原稿を受け取った時は驚きましたが、まさか無題とのタイトルで白紙の本がこんなに売れるとは！　読者は自分で私小説を書き込んだり明るい未来を創造しようと前向きになるみたいです！　先生からのメッセージしっかり届いてますよ！　じゃ！」
「あ〜っ！　もう！」
　部屋の片隅には未開封のテレビゲームと賞味期限の切れたお菓子、漫画と遊園地のチケットが埃を被っていた。