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雨上がりの日没、ギギ、、と金物の軋る様な聲が涌く。
暗灰に澱む雲を睨みながら、角の削れた石段を辿っていた。――つきん、踝に痛みが跳ね、屈んで裾をまくる。それは浅緑の螽斯(キリギリス)だった。
首切螽斯(クビキリギス)だと見当が付き、寸前で手を止めた。咬んだまま引っ張れば首が抜ける。苛立ちより嫌悪が勝ち、私は足を小刻みに蹴上げて、螽斯の退散を待った。
にたり。眼が嗤った気がした。
触覚が空を斬り、紅い顎から、じゅぐ、と嫌な音がした。肉に喰い込む肢が、翅の縁が錆びた色に染まる。
堪えきれずに払い除けた。刎ね上げた頭が――ゴドン。と重い響きで着地、石段を削って草藪へ転がり込んだ。
恐る恐る覗く。
苔に覆われた円い石が、振り向いて嗤った。
古い地蔵の首だった。
血塗れの歯がギギ、、と軋る。呼応する様に、草藪を聲が埋めた。
後退って躓き、尻餅を付いた石段は、横たわる首無し地蔵の群れだった。
暗灰に澱む雲を睨みながら、角の削れた石段を辿っていた。――つきん、踝に痛みが跳ね、屈んで裾をまくる。それは浅緑の螽斯(キリギリス)だった。
首切螽斯(クビキリギス)だと見当が付き、寸前で手を止めた。咬んだまま引っ張れば首が抜ける。苛立ちより嫌悪が勝ち、私は足を小刻みに蹴上げて、螽斯の退散を待った。
にたり。眼が嗤った気がした。
触覚が空を斬り、紅い顎から、じゅぐ、と嫌な音がした。肉に喰い込む肢が、翅の縁が錆びた色に染まる。
堪えきれずに払い除けた。刎ね上げた頭が――ゴドン。と重い響きで着地、石段を削って草藪へ転がり込んだ。
恐る恐る覗く。
苔に覆われた円い石が、振り向いて嗤った。
古い地蔵の首だった。
血塗れの歯がギギ、、と軋る。呼応する様に、草藪を聲が埋めた。
後退って躓き、尻餅を付いた石段は、横たわる首無し地蔵の群れだった。
ホラー
公開:20/07/13 15:41
更新:20/07/13 16:06
更新:20/07/13 16:06
首切螽斯(クビキリギス)
俗称、血吸いバッタ
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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