時計技師

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「よう、華子」
「一体今日はどうしたのよ」
 待ち合わせ場所にやって来た私は、驚いた声で尋ねる。貴志はいつも時間に遅れてくる。ひどい時は3時間待ったこともある。優しいし他に悪い所はないのに、時間だけはどうしても守ってくれない。
 そんな貴志が、私より早く来ているなんて。
「何が起きたのよ」
「新しい時計を買ったんだよ」
 そう言うと貴志はフッフッフッと私に腕を見せた。
「……はあ? 何これ。ばかにしてるの」
 貴志の腕には時計などなかった。というかあるというのか。手首にマジックのようなもので時計が描かれている。そして確かに動いていた。
「知らないの? 今流行ってるんだぜ」
 周りを見ると、通り過ぎる人々の腕には皆時計が描かれていた。嘘でしょ。なんなのこ

「……フリーズしたか。生命加速装置で地球を滅亡させるのも案外難しいな」
 銀河系外時計技師の男はそう言ってCtrl+Zキーを押した。
SF
公開:20/07/13 09:21
更新:20/07/13 09:24

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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